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2009年7月 2日 (木)

恐怖心

基本に帰ろうシリーズ

「波止場」のDVDを観たら、
ロットスタイガーもそのインタビューVで
歴史的名シーンと言われることとなる
天才マーロンブランドとのタクシーシーンが
恐怖との闘いであったと告白していた。
スタイガーは続けて
「しかし恐怖心こそ創造力の生みの親になり得る。
これはムリだと恐怖におののく時
ある程度の才能があって何とかその場を切り抜けると
恐怖のエネルギーが創造力になっている。
それが実力以上の力を出させるのだ。」

無名だったスタイガーはこの演技によって
アカデミー賞にノミネートされ
俳優人生を大きく花開かせた。
ついには「夜の大捜査線」で最優秀主演男優賞を獲ったのも
彼に言わせれば実力以上の力を出したからだろう。

「波止場」での彼の恐怖とは何だったかというと
彼のアップのカットの時に監督が既に名演技をし終えた
ブランドを帰してしまっていたことから来ていたものだった。
自分への扱いを大監督やブランドからの最悪の評価と受け取ったのだ。
彼は記録係を相手に
守るべきは自分の命かそれとも愛する弟の心なのかの選択を迫られた
暴力団会計士のクローズアップを演じきった。
それを切り抜けさせたのが「ある程度の才能」だと言う。

さて見方を変え
スタッフ側からすればつまり
ひどい扱いをすればするだけそこを突破してくる才能に出会える訳だ。
出て来ないならクレームを付けて製作費を捻出すればいい。

俳優は現場に来た時から評価Aを貰おうと考える。
いい扱いをしてもらい気分良く演技して素晴らしい!と言われて帰りたい。
でなければ次の仕事は無いからだ。

しかしスタッフにとって現場は試行錯誤の創造の場だ。
完成させた後にしか確固たる評価はやって来ない。
視聴率や動員数の数字の責任を取るのはスタッフだ。
そのズレに俳優が気付かなければ、俳優は必ずスタッフに負ける。

とは言え、スタイガーのエピソードは僕たちを力付けてくれる。
俳優の仕事が何かを規定してくれるからだ。
思い返せば気の弱い僕は何度となく現場の恐怖に潰されてきた。
まだ俳優として仕事をしているのが不思議なぐらいだ。
初心忘るべからず。
基本に帰り、慣れない現場に行った頃の恐怖を思い出そう。
そしてそこにあった俳優としての夢も思い出そう。
何度も手放してしまった夢をもう一度握りしめよう。

行くしかないと踏み切ることが出来れば
引き止めていた力を緩めることができれば
引っ張り合ってたもう片方に焦点を合わせ
平気な顔をしてるもうひとりの自分を見つければ
体がふわふわと走り出すのを見守って手放せば
時間が止まったような静寂が訪れる。
その場を こけおどしの場を
どうか走り抜けてってくれ。

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コメント

こんにちは

「しかし恐怖心こそ創造力の生みの親になり得る。
これはムリだと恐怖におののく時
ある程度の才能があって何とかその場を切り抜けると
恐怖のエネルギーが創造力になっている。
それが実力以上の力を出させるのだ。」

すごく奥が深いですね。名言です。
何をするのも自分との闘いですから。
でも、私はいつも逃げてしまっている気がします。

そして、人の評価って様々なんですよね。
誰でも、一番いい評価が欲しい・認められたい・注目して欲しい。
特に俳優さんは職業柄そう思われることと思います。
ド素人が生意気を言うようで本当に申し訳ありませんが、
恐怖感って大事だと思います。
迫真の演技って恐怖感の極限って感じがします。
俳優さんは様々な役をされますが、当たり役と言うものも存在しますし。
ただ、変にそのイメージが強すぎると他の役をなさったときに観る側は違和感を感じるのも否定できませんが。(苦笑)

そのままの牟田さんでいいと私は思います。
自分自身と闘っておられるなんて、すごいことですよ。

今の牟田さんに送る歌は、古内東子さんの「歩幅」です。
ご迷惑でなければ、これからもファンの一人として応援させていただきます。

脈絡の無い、そして生意気なコメントを書いてしまったご無礼をお許しください。

投稿: やぁちゃん | 2009年7月 3日 (金) 20時23分

やぁちゃん
翌日読み返したら面倒くさいこと書いちゃったなと思ったんですが
良かったです、そうなんですよね
汲み取って頂きありがとうございます
お察しのとうり、壁にぶち当たってます
思い切った過激な行動もいくつか考えたりしてます。
まぁ、でもいい日も悪い日も特別ですもんね、
大事にします。ありがとうございます

投稿: ミュウ | 2009年7月 4日 (土) 16時57分

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